

農業のデータ活用を推進し未来を作る:テラスマイル株式会社 金田千広
- 2020.08.25
- 利用者紹介
浜松のコワーキングスペース&シェアオフィス「Dexi」の利用者様にインタビューをして、事業にかける想いと素顔に迫る本企画。今回は、テラスマイル株式会社取締役の金田さんにお話を伺いました
プロフィール
テラスマイル株式会社
取締役 金田千広
営農支援のためのクラウド農業情報基盤「RightARM」を開発。これまでの営農現場で経験的・感覚的におこなわれていた農作業の時期や、作付けから出荷までの様々な計画や業務も、データに基づき的確に判断するサポートを行う。
「データはあるけど使えない」を変える
-「RightARM」を中心とした農業支援をされていると伺いました。どんな理由で生まれたサービスなのでしょうか?
代表の生駒が、トマト農園を赤字から黒字にした経験を生かして、他の農家さんのお手伝いをしようと始めたのが、テラスマイル株式会社です。
私も最初は、持ち帰ってきたデータをパソコンに打ち込んで、分析と考察をして農家さんと話し合うということをやっていました。しかし、それを一個一個やるのは時間がかかって、お金がかかる。システム化しようよと。私たちの作業の負担をなくすために開発したのがRightARMなんです。
-自分たちの課題から生まれたサービスなんですね。「RightARM」でどんなことができますか?
大規模な農家さんは、畑に多くのセンサーをさして、温度や湿度を測っているのですが、使うセンサーが違うとデータのフォーマットが違うという問題がありました。似たような計測項目でも、単位が微妙に違うということもあります。畑や農作物ごと、農家さんごとにフォーマットが違うと、比較することが非常に難しい。データがあっても、分析するまでに時間がかかるんです。それを一発解決できるのが、RightARMのコア機能になっている異なるフォーマットのデータを1つのフォーマットに変換すると言う技術です。
弊社では、このコンバージョンシステムを中核に、大規模で少人数で畑の自動化を目指す「スマート農業」を行っている農家さんに対して、IoTや機械の導入、そのデータの生かし方を提案しています。
-日本の農業でもスマート化が進んでいるんですね。実際、農家さんはどんな課題を抱えているのでしょうか?
どんな産業でもそうですが、規模が大きくなるほど経営が効率化されます。だから、農業でも規模を大きくしたいのですが、日本の農業はスケールするのがとても難しいのです。
いろいろな障壁がありますが、その中の1つに管理や情報把握に関する問題があります。簡単な例だと不良の畑があっても気がつけないという課題は多いです。
管理する畑が大規模になると、畑ごとの生産量を把握するのは簡単ではありません。たとえば、収穫するとき、複数の畑を同時に収穫するとわかりませんよね。
こうした場合は、正しいデータを取れるように、オペレーションの改善を一緒に行っていくことになります。実際、センサーのデータと収穫量のデータを分析することで、最適な栽培方法を見つけ、グループ全体で30%ほど収穫量が上がった農家さんもいます。
東大を卒業し、農業の道へ
-東大出身と伺いました。
私が生まれた90年代は酸性雨や地球温暖化が騒がれていた時期。人間のせいで他の生き物が迷惑しているんだということを幼いながらに感じていました。これが、環境問題や農業に興味を持ったきっかけです。そこから東京大学の農学部に進学し、カビの基礎研究をしていました。卒業後は、建設関係の会社をへて、牧之原にある株式会社エムスクエア・ラボに転職。元々野菜の流通をやっていた会社で、農家さんからレストランに直接食材を届けるということをやっていました。
ただ、特殊な野菜をレストランからオーダーされることがあり、ないなら自分たちで作ればいいじゃんと。そこで、100%子会社の農業法人を立ち上げ、私はその農場長と畑探しから作物を育てる計画を立てて、カラフルニンジンを作りました。
立ち上げの時は手作業が多く、収穫をして人参の頭を切って、洗う。これが手作業だったんですよね。冬の寒い中、やっていました。
-東大を卒業して人参を洗っていたというのはびっくりしました。今の仕事にはどのように就くことに?
エムスクエア・ラボは、農業×ロボットの取り組みとして、業務分析もやっていました。
そんな時に、エムスクエア・ラボの加藤社長とテラスマイルの生駒が出会いました。そこから部分出向として、週に1日は生駒の手伝いをすることになり、最終的には100%出向の状態に。
「RightARM」の構想が出てきたのはこの頃です。システムを成功させるためにもフルコミットすることになり、送りだされる形で転職することになりました。
エムスクエア・ラボはテラスマイルの株主でもあり、いい関係を続けています。
-ソフトウェアの開発もされているのでしょうか?
開発は外部パートナーと一緒に行っていますが、プロダクトの方向性もかなり明確になってきたので、今、エンジニアを鋭意募集しているところです。将来はエンジニア組織を社内に持つのが夢です。代表の生駒はSIer出身ですが、私自身、RightARM事業を立ち上げる中で情報技術を学ぶ必要性を感じ、、。静岡大学の大学院でソフトウェアの設計や数学を勉強しています。
大学院の教授がアドバイスしてくれることもあるので、大学っていいところだなと今更実感しています。
ベンチャー企業=激務ではない
-育児や大学院の勉強、実務。全てを行うのは大変そうですが、仕事場はどんなカルチャーがありますか?
トップダウンではなく、ネットワーク側の組織を目指していて、個人が自立して意見を言って、プロジェクトを推進していく。個人の意見を尊重している会社です。
子どもがいる社員が多いので、働きやすい環境も心がけています。誰でもOKというわけではないですが、リモートワークでもOKですし、ベンチャーのイメージからすると残業は少な目ですし、有給も取りやすいです。ベンチャーというと激務を想像される方は多いと思いますが、緩い方だと思いますね。
-浜松のベンチャー界隈が盛り上がっていますが、浜松で事業をするメリットは?
浜松はシステム開発の人材が取りやすいと思います。浜松のオフィスは3人、8月から4人になる予定です。本社がある宮崎とは、違うなと思いますね。
インタビューを終えて
ベンチャー企業の取締役をしながら、静岡大学の大学院で学生をして、子育てもする。バイタリティと好奇心の強い方という印象を受けました。でも、非常に話しやすく、インタビューも少し長めに。テラスマイルさんと金田さんの未来に期待が膨らむインタビューでした。
テラスマイル株式会社
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インタビュアー 島津健吾
浜松・掛川を拠点に、Webコンテンツの企画や制作、Web記事執筆、SNSとブログの運営代行をおこなっています。
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