

食のブランディングで終わらない。私たちは販路開拓やマーケットインの形をつくる:Yui Support代表 玉置麻菜美
- 2019.12.28
- 利用者紹介
浜松のコワーキングスペース&シェアオフィス「Dexi」の利用者様にインタビューをして、事業にかける想いと素顔に迫る本企画。今回は、Yui Support合同会社代表の玉置さんにお話を伺いました
プロフィール
Yui Support合同会社
代表 玉置麻菜美
平成31年4月に法人化。静岡県内の農産物を保育園、施設、病院、飲食店様に納品する卸事業の他、マーケティング、デザイン、販路開拓まで一括してサポートするコンサルタント事業を展開。県内農産物を活用したオリジナル商品開発事業、商品を通販で販売するネット通販事業など、農業、食に関わる様々な事業を行う。
農家の課題は給食で解決する
-まず、Yui Supportを始めたきっかけを教えてください
もともとProductoringという食品の輸出やブランディングを手がける企業で働いていました。3年間にわたり農家さんのネット通販の立ち上げや試食会などのサポートをしていく中で、ブランディングする以前に売上という根幹が安定していないことに気がつきました。
たとえば、JAを出て個人で生産から営業までするのは、大変な労力がかかります。加えて、年間を通して販売予測がつきにくいため、生産量や売上が安定しません。なかには全てを自分でやることができず、辞めていく人もいます。それではいけない。そう思い、Productoringを退社し2019年4月にYui Supportを創業しました。
-農家さんの課題をどのように解決しようとしたのですか?
「これだけ売れる場所がある」と先に予測がついていれば、農家さんも安定するのではと思いました。マーケットインの発想です。そこで、パッと思いついたのが給食でした。
年間の需要がわかり予測を立てられ、野菜の売値も給食だから変動することもない。そこからこども園や病院などを回り、売り先を探しました。
現在は、100件ほどの農家さんとつながりがあり、そのうち20件ほどの農家さんから野菜を仕入れ、こども園や病院といった施設にお届けしています。このように売上の予測を立てられることで、農家さんもやっとブランディングや新しい取り組みにチャレンジできるはずです。
-給食を思いついたのはすごい!
ありがとうございます(笑)。給食で農家さんの野菜を使っていただくメリットは売上の他にもあって。たとえば、それを食べている子どもの顔が見えること。農家さんの場合、消費者の声を聞く機会はほとんどありません。
でも、給食なら子どもたちが食べていることはわかるし、一言でも子どもたちから「ありがとう」と言われたら?誰でも心が動きますよね。さらに、その子どもたちが20年後、30年後に、その体験を元に食に関わる仕事についたら、これ以上嬉しいことはありません。
ブランディングから販路開拓まで。企業連携で輸出の取組みも
-食の6次産業に取り組んでいると聞きました。どんな取り組みなのでしょうか?
食の6次産業という言葉を聞いたことはありますか?1次産業、2次産業、3次産業の数字を全て足して、6次産業と呼ばれているのですが、平たく言えば生産~流通までを一体化する取り組みです。国家戦略プロジェクト「食の6次産業化プロデューサー」という資格もあり、私も取得しています。
-具体的にどういう取り組みをしているのでしょうか?
たとえば、「野菜を作りすぎた!どうしよう」という相談から、SNSやホームページ、パッケージのデザインといった農家さんの悩みを解決していきます。
Yui Supportの強みは、さまざまなスキルを持ったフリーランス とつながり、農家さんの悩みにあわせてチームをカスタマイズできることです。通販に強い人もいれば、デザインに精通している人もいます。農家さんの悩みは多種多様です。
一つのチームで動くよりも、柔軟にチームを変えられるほうが農家さんにより良いものを提供できると思っています。
-デザインして終わり。というのがブランディングによくあることですが、販売までやられるんですね?
それも、様々なつながりを生かしながら、販路開拓や情報発信までやれるからです。卸事業をしている繋がりから外食の方に使ってもらったり、国内だけではなく、企業連携もしているので輸出も可能です。
他にも、浜名湖ファームさんの農業体験やクッキング講座などのイベント集客などもお手伝いしたことがあります。自社でやられた時は、なかなか集客に苦戦していたところ、Yui Supportで呼びかけをしたらすぐに満席になりました。
「当たり前」を失って気がついたこと。そして今後の取り組み
-なぜ農業に関わろうと思ったのですか?
もともと私が農業に関わろうと思ったきっかけは、子どもの頃の原体験があったからです。私は母親の実家が長野県の山奥で、父親が愛媛で、沖縄にも住んでいたことで、子どもの頃から様々な地域を回る機会に恵まれました。なかでも、子どもの頃に、長野のおばあちゃんの家で竹の子やワラビをとっていた思い出は、今の自分を作る上で非常に大切な経験だったと思います。
でも、ある日、土砂崩れで家が潰れ、人が住めなくなってしまったのです。とてもショックでした。家が潰れてしまったこともそうですが、自分の子どもに同じ体験をさせてあげることができない。
それまでは当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなったことで、何かしなくちゃという気持ちが自分の中に湧き起こってきました。このとき感じたことが原動力となり、Productoringとの出会い、Maman事業の立ち上げにつながっていきます。
-その原体験は大きいですね。最後に今後目指していく方向を教えていただけますか?
こうした子どもの頃の体験から今に至るまでの経験をもとに、Yui Supportは【農×食×人を結び、新しい価値を創造し未来へつなぐ】を基本理念としています。
ただ売るだけではなく、持続的な食文化を作り未来につなげていけるようにチャレンジしていけたらと思います。その一環として、12月19日に農×食×人を結ぶ「食」体験・体感メディア「Yui〜結〜Shizuoka」をオープンしました。
このメディアは、静岡県の農業体験やイベントを掲載したり、静岡県産の食材を購入できたり、地域と食と人を結びつけるメディアとしてスタートしました。まだ始まったばかりのメディアですが、チェックしてみてください。
取材を終えて
1時間の取材を終えてまず思ったのが、「この活動は多くの人に伝えねば!」ということ。農家さんが直面している課題を解決していくためにはYui Supportさんのような、企業が本当に必要だと思いました。また、私たちも食べるだけではなく、生産者さんともっと関わりを持つ必要があるのではないでしょうか?
ホームページ
https://www.facebook.com/yuisupport/
インタビュアー 島津健吾
浜松・掛川を拠点に、Webコンテンツの企画や制作、Web記事執筆、SNSとブログの運営代行をおこなっています。